今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第4話] 「フォーカスの当て方」の深度を深める

経営数値の精緻化により、経営判断は研ぎ澄まされる

現在、コンサルティングをやらせて頂いている、とあるお客様がこんなことを仰いました。

「村上さんがうちにコンサルで入ってもらって以来、売上がなぜか伸びているんです。別にこれといった手を打っていないのに不思議ですよね。」そのお客様は三代続いている和菓子の製造販売業をやられている経営者です。

まだ、正式なコンサルティングとまではいかず、現在は月1回ペースで近況の報告を頂き、私が思ったことをコメントさせて頂いていると言った簡易的なコンサルティングです。もちろん、将来的には、経営状態を見える化する仕組みと、打ち手実行の仕組みを構築することを想定しているので、そこに経営者の意識が繋がって、会社がより良くなるようにとの思いでコメントさせて頂いています。

また、この経営者の方はこんなことも仰いました。「村上さんのお客様は皆さん業績が上がっているのではないですか?」何を根拠にそのような事を言われたのか尋ねませんでしたが、事実、私のお客様は皆さん大幅な、とまではいかないまでも、昨対比でそれなりに業績が良くなっています。

お客様の情報に関しては守秘義務があるので、業績が伸びている理由は敢えて言わず、私は、「はい、確かに伸びておられます。ただし、それは私がどうのこうのではなく、お客様皆さんが努力されている証拠だと思います。」とお答えさせて頂きました。

私もちょうどいい機会だったので、今お手伝いさせて頂いているすべてのお客様がなぜ業績を伸ばしておられるのか、考えてみることにしました。
そこでふと頭に浮かんだことは「フォーカスの当て方が以前と変わられたのではないだろうか?」ということでした。

あまたある経営の要諦の一つに、「ヒト・モノ・カネをビジネスチャンスの可能性ありと判断した商品サービスに集中的に投入すべき」というものがあります。いわゆる「集中と分散」の集中のことです。これは経営者としては当たり前に常に心掛けていなければならない事です。

今までは、経営者の方々は、どの商品サービスにヒト・モノ・カネを集中すべきか特に考えたことがなかったものの、私のコンサルティングで、商品サービスごとの利益率が見えるようになったことを通して、経営判断のフォーカスの当て方がより具体的になったのではないでしょうか。

また、経営計画上も商品サービスごとの利益率を明示しているので、毎月の実績と比較することにより、必要に応じて最適な打ち手を実行できるようになったことも大きいと言えます。それもこれも、経営者の皆さんが自らの判断で、フォーカスの当て方を深くしておられるからだと思います。

先ほどご紹介した経営者の方は、果たせるかな、何十種類もの和菓子(老舗ですが、味の改善を常に怠らず、とても美味しくて評判です)を製造されているものの、原価計算がまだ導入されていません。なので、商品別利益が不明のままの、いわばドンブリ勘定です。売上が今以上のスピードで伸びていく前に仕組みを構築しなければならない必要性をヒシヒシと感じています。お客様のフォーカスの深度もますます深くなっていくでしょう。非常に楽しみにしています。

一般的に、仕入れた原材料に人手をかけて付加価値を加えて市場に販売する、こういったビジネスを行う会社に原価計算の仕組みが構築されて、商品別利益が把握できるようになると、次のような打ち手が可能となります。

「儲かっている商品にはもっとヒト・モノ・カネを投入し、そうでない商品は(製造中止も視野に入れた)テコ入れを実施していく」ことにより、「利益は取るが、損は取らない」ということが可能になります。結果的に、お金も利益も最大化できるようになるのです。

もちろん仕入れた商品をそのまま市場に販売する仕入販売ビジネスも、原価計算とまではいかないまでも、通常の財務会計ではまずお目にかかれない、「すべての経費を商品別に配分し切って、商品別利益を明確にする」手法により、儲かっている商品にはもっとヒト・モノ・カネを投入し、儲かっていない商品はテコ入れを実施していくことが可能となるのです。そして、結果的にお金と利益を最大化していくことができるようになります。

あなたは経営者として、「フォーカスの当て方」の深度を深めていますか?