今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第2話] 「経験と勘」から「再現性のある仕組」へ

「経験と勘による経営」には賞味期限がある

様々な経営者が集まる異業種交流会に時折り参加しますが、会場で情報交換をさせて頂いていると、「私は長年培ってきた経験と勘で、自分の会社を今まで引っ張ってきた」というような事を話される中小企業経営者をよくお見受けします。

そのような社長にお会いした場合、時間の制約もあるので突っ込んだお話はできませんが、「この社長は、自社の今後の成長発展をどのようにお考えなのだろうか?」ととても気になることがあります。

それは、社長が御自分の「経営と勘」に相当な自負を持たれていて、今後もその経験と勘で十分にやっていける!といった自信を、話しぶりや表情から十二分に感じ取ることが出来るからです。

創業時は、文字通りの徒手空拳で起業され、ゼロの状態から顧客を開拓し、事業規模も大きくし、従業員も雇い、やがて会社らしい組織を作り上げる中小企業経営者は数多くいらっしゃいます。その過程は、「経験と勘」にもとづくなりふり構わぬガムシャラな経営だったことでしょう。

「経験と勘」の経営は、決して否定されるものではありません。そういったガムシャラな創業経営者の苦労なくしては今の基盤を築くことはできなかったのですから、その功績は間違いなく称賛に値します。

しかし、「経験と勘」の経営がこれまで上手くいってきたからというだけで、今後も同じやり方が通用するとは誰も保証してくれません。

つまり、社長が御自身の会社を、競合よりもさらに永続できる強い会社に変えていきたい場合、今後も、「経験と勘」の経営スタイルのままでいいのか、今一度立ち止まって考えることが必要です。

「経験と勘」による経営スタイルには「属人性が強く、再現性が低い」という特徴があります。経営者がカリスマ的な人物で世代交代がまだ先の場合は、いい方向に作用しますが、経営者が高齢になってきて世代交代が求められる段階になると、その欠点が露呈します。

後継者の経営スタイルが創業経営者のそれとはまったく同じにはならないため、創業経営者の経営手腕の素晴らしい部分を再現できないのです。

「経験と勘」による経営の対極に「再現性のある仕組み」による経営があります。

 会社経営とは、営業、受注、製造、出荷、納品、請求、カスタマーサポートといった様々な局面において顧客との関わりの中で進められるものです。当然、各局面において、軽重の差はあるにせよ、経営判断を求められる局面は多々あります。

事業規模が大きくなれば、経営者が必要とする経営判断材料というのは多岐にわたってきます。このような状況下で、経営者が従来通りの「経験と勘」で経営判断をすると、上手くいく場合もありますが、判断を誤る場合も出てくることが予想できます。

なぜなら、事業規模が拡大するほど、従来の経験と勘では対応できない事態が続出するからです。だからこそ、多岐にわたる経営判断材料を経営者が仕組みで把握することが必要不可欠になってくるのです。

仕組みの中身はこうでなければいけない、という定義のようなものはありません。なぜなら、生きものである会社のどの局面でも、仕組みは構築できますし、事業規模・業種・従業員規模等々、会社が10社あれば10社とも状況は異なります。それぞれの会社が自社の状況に応じた仕組みを構築すればいいのです。

私がセミナーでお伝えしているように、会社の状況に応じた仕組みを構築できれば、利益もお金も競合よりも、はるかに多く残せる会社に変貌していくことが可能になるのです。

必要な経営判断材料を仕組みの中から自在に抽出できるようになれば、経営者は高い精度での経営判断が可能となり、最適な打ち手を最速に実行可能となります。経営を「再現性のある仕組み」で行うことの必要性がそこにあるのです。

あなたは経営者として、御自身の経験と勘による経営が賞味期限切れになっていることを受け入れていますか?