今週のコラム 「万人を魅了する千年企業を目指す!」 [第7話] 経営計画を変えることに躊躇しない

経営計画が「仮説の塊(かたまり)」であることを逆手に取る

先日ある集まりで、知り合いの経営者とお会いする機会があり、その時に「村上さん、経営計画は出来上がった後、修正してもいいんですか?」と聞かれました。

私は、すかさず「ええ、もちろん構いません。と言いますか、むしろ計画作成時に想定していた状況が変わったのであれば、修正すべきです。そこで躊躇したらダメです。」とお答えしました。もちろん、以下に述べる内容も補足してお伝えしました。

経営者は、例えば10年後に会社がどうなっていたいのか、というビジョンを明確に描くものです。そしてそのビジョンを実現するために、7年後、5年後、3年後、1年後には会社としてどうなっていなければいけないのか、をゴール逆算型で目標設定します。

それを経営計画といい、具体的には売上計画、投資計画、借入計画、経費計画、人事計画、キャッシュフロー計画等の個別計画から構成されます(戦略計画、行動計画といった数値計画以外のものも含みます)。

この場合、計画の基礎になるのは、あくまでも仮説です。1年後に当社を取り巻く環境は競合も含めて、こんな状況になる「だろう」から、売上計画としてはこう立てよう、投資計画としてはこう立てよう、といった具合に作っていくのです。もちろん、各個別計画の根拠として、詳細な仮説を立てることは言うまでもありません。これと同様の手順を踏んで2年目以降の計画も作っていきます。

ここで明確に言えるのは、1年後より2年後、2年後より3年後、と言うように先になればなるほど仮説の精度は落ちてくる、という事です。確かに計画を作る際の基礎となる仮説は、その時々で考え得る限りの精度で作るのが当然です。

しかし、仮説には以下のような脆さが常に付きまといます。1つは、想定不能の環境変化の速さゆえ、計画作成時に立てた仮説が早晩成り立たなくなる点です。もう一つは、計画作成時の外部環境に対する見立てに作成担当者の主観が入るという点です。

つまり、計画の作成担当を変えた場合、担当者によっては外部環境の捉え方が同じではないため、出来上がりの計画も変わってくるということです。

だとしたら、計画作成時に想定していた環境がその後変化してきたら(これは国の機関から公表される統計データ等で客観的に把握できる場合もあるし、数字に表れないまでも、経営者が肌感覚で察知する場合もあります)、その時こそ、躊躇なく経営計画を修正しなければなりません。

なぜか?

それは企業経営において経営計画がどのようなツールなのか、その意味合いを考えれば明らかです。経営計画は会社がビジョン実現に向かって進むべき方向性を数字で表したものです。

したがって、実態が計画通りに進捗しているかどうか把握していく必要があります。その進捗把握すべき経営計画が環境変化を反映していない陳腐化したものだったら、経営計画としての役目を喪失したも同然です。

だからこそ、計画作成時の想定を超える環境変化を感知したら、一刻も早く計画を修正しなければならないのです。

では、なぜ冒頭紹介したような「一旦作った経営計画は修正してもいいのか?」といった疑問を企業経営者がお持ちになるのでしょうか?

考え得る要因としては、まず「一度、取引先や取引銀行に発表したものを変えたら、相手からどう思われるのか分からないので嫌だ」という、いわゆる見栄からくるブレーキです。もう一つは、「あれだけ手間を掛けて作った計画をまた作り直すのは労力がかかるので、できれば避けたい」という自分可愛さからくるエゴからくるブレーキです。

いずれにしても、以前このコラムで御紹介した「経営者としての覚悟」をお持ちとはお世辞にも言えません。

上場企業の場合は、業績予想を修正発表する報道を目にする事があると思いますが、あれも計画修正の一つです。彼らは、一旦発表した計画(つまり業績予想)に対して、売上高で10%以上、もしくは利益で30%以上、変動することが予測できた時点で遅滞なく業績予想の修正を公表すべし、というルールがあるので、彼らはそれを遵守している訳です。

ただし、彼らが業績予想の修正を公表する際に最も腐心するのは、どのようなコメントを付けるのが株式市場を刺激しないのか、の1点に尽きます。特に下方修正の場合、コメントの伝わり方次第では、株価が大きく下落することになりかねないので、彼らは非常に慎重な言葉選びをしてコメントを発表しています。

一方、中小企業の場合、未上場ということもあり、株式市場の反応などは一切気にする必要がないので、判断時に腐心すべき点は、先に述べた見栄とかエゴはかなぐり捨てて、経営者が本来持つべき覚悟に忠実に沿った判断・行動をしているかどうかです。

逆に変えるべき計画を変えることなく、意味を持たなくなった計画に固執して、そこを目がけて社員を働かせていたら、社員が疲弊することは明らかです。会社の未来に不安を抱き、退職者が続出することも容易に想像が付きます。このように。良いことなど一つもありません。

会社の将来を担っている経営者は、「自社の経営計画が時代遅れになっていないかについて常に監視し、躊躇なく変更していかなければ、生き残っていけない」という事です。

あなたは、自社の経営計画を変えることに躊躇していませんか?