今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第11話] 耳に心地よい助言を追い求める怖さを知る!

軸のある経営者は、耳の痛い助言を

先日、とある異業種交流会に参加した際に、名刺交換させていただいたお相手が、私と同じ経営コンサルタントでした。

経営コンサルタントと一口に言ってもその領域はとても広いので、おそらく私とは異なる分野の方だろうなと思い、お仕事の内容をお聞きしたところ、案の定、全く異なる分野のコンサルタントの方でした。具体的には、心理学や占星術を駆使したスピリチュアル的なサポートを経営者に対して提供されているとのことでした。お話を聞く限りでは、その方は一定の成果も上げておられて、クライアントの経営者にも頼りにされているとのことでした。

現に、世の中にはスピリチュアル系コンサルタントに限らず、経営コンサルタントとして活躍している方は数多くいらっしゃいます。なので、そのやり方の良し悪しに言及するつもりはありません。

むしろ私が気になるのは、クライアントである経営者が世にごまんといるコンサルタントの助言を「活用」しているつもりになっているだけで、実は「依存」していないだろうか、ということです。

そもそも経営コンサルティングという仕事は、クライアントに深く入り込んで助言をしながら、時には指導性も発揮しながら、一定の成果を出していくことを求められる仕事です。

ただし、そこで提供する一切のものは、目に見えないサービスです。その手法には様々なものがあり、当社のように経営数値により経営を見える化して打ち手に反映していく手法や、はたまた、冒頭に紹介したコンサルタントのようにスピリチュアル的なアドバイスをして経営者を内面からサポートしていくやり方とか、コンサルタントが100人いれば100通りの手法があります。あまたある手法からどれを選択するかは経営者の自由です。

経営者とはまさに孤独で、社内に相談できる人などいないのが普通です。したがって、常に途切れることなく発生する社内外の問題に向き合っている経営者にとって、相談相手もいない中、自分の感性を常に研ぎ澄ました状態にしておきたい必要性に駆られる場面も多くあるでしょう。だからこそ、外部のコンサルタントに頼りたくなるのも理解できます。

ただし、ここで留意すべきは、「助言に依存してしまうことの怖さを知る」ということです。

例えば、社内に何らかの仕組みを作り、それを回していく体制作りを指導するコンサルティングの場合、結果的に社内に仕組みが作られ、回していく体制も作られるため、成果を上げ続けることの再現性が確保できます。

一方で、コンサルタントの一方的な助言に従うだけのコンサルティングの場合、一時的に成果が出ることもありますが、その場合、成果を出し続けるためには、そのコンサルタントの助言を受け続けなければならなくなります。

つまり、特定のコンサルタントに依存し続けしなければ、成果を出していくことの再現性が確保できなくなるのです。極めて非現実的と言わざるを得ません。

経営者としての覚悟が肚落ちしている社長は、コンサルタントの助言を、冷静に自らの経営者としての尺度に照らして必要な部分だけ採り入れます(つまり、いいとこ取りです)。逆に、覚悟が肚落ちしていない経営者は、無条件に丸ごと受け入れて、自分の経営者としての姿勢をそこに合わせてしまいます。まさに依存に他なりません。

そのような経営者は、日頃の言動にもそれが表れて、はたから見ると右往左往して非常に心もとなく映ります。気の毒なのはその会社の社員です。彼らにとって社長とは、ある意味自分の人生を賭けた拠り所のような存在です。その拠り所でいて欲しい社長が、コンサルタントの助言を経営者としての判断もなく、ただ全面的に依存しているとしたら、どうでしょうか?

そんな状態では、自分の将来もコンサルタントに握られているも同然で、真剣に会社の将来に自らの将来を重ね合わせて考えている社員ほど、会社から離れていくのは必至です。

だからこそ、経営者は「今お世話になっているコンサルタントに依存していないかどうか」の一点について、常に自己チェックしていくことが不可欠なのです。

会社として、必要性を判断してコンサルティングを導入することはむしろ正しいといえます。しかし、肝心なのは、社長が経営者としての軸を見失わず、外部の助言も自らの尺度を通して吟味して、必要なものは採り入れて、不要なものは躊躇なく捨てるということです。そういった太い軸を持った経営者は、社員を惹きつけてやみません。

軸の太い経営者とそうでない経営者、この両極の経営者が率いる会社が、5年後10年後、どのような差がついているのかは自明です。

あなたは、太い軸を持った経営者として外部の助言を「活用」していますか?それとも、軸を持たない経営者として外部の助言に「依存」していることに気付かず、活用しているつもりになっていませんか?