今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [2020年5月23日号] 利益を倍にするには、売上はあとどれだけ必要か?

以前、
 経営者向けのセミナーでこんな
 質問をしたことがあります。

「ある会社は、商品を1個10円で仕入れ、
 20円で売ります。今期1万個仕入れて
 売りました。売上20万円、粗利10万円
 です。
 商品が売れても売れなくても掛かる経費が
 6万円あります。なので、今期の利益は
 差引き4万円です。
 さて、利益を倍の8万円にするには、
 売上はあとどれだけ必要でしょうか?」

 この問いに対して、
 皆さん、いろいろな答えを出していました。

その中でも、特に印象深かったのは、
 次のような答えでした。

「利益を倍にするためには、売上も倍
 ではないでしょうか。
 だから、追加で必要な売上は10万円です。」

 もちろん、正解ではありません。

利益を倍にするということは、
 追加で4万円の利益を作らなければなりません。

つまり、
 利益をあと4万円増やす必要がある訳です。

利益を4万円増やすということは、
 粗利益を4万円増やすということです。

この場合、粗利率50%の商品です。

なので、
 粗利益4万円を増やすために必要な売上高は、

必要粗利益4万円÷50%=8万円

です。

 検証してみます。

売上(20+8)×50%=粗利益14
 粗利益14-経費6=(新)利益8

(新)利益8=(旧)利益4×2倍

検証OKですね。

 以上、シンプルな問いですが、
 とても重要な会計手法が満載なのです。

 売上がどれだけ増えたら(もしくは減ったら)、
 粗利はどれだけ増えるのか(もしくは減るのか)。

その結果、
 利益はどれだけ増えるのか(もしくは減るのか)。

経営者によっては、
 この関係を全くご存知なく、

一足飛びに、
 「売上が倍になれば、利益も倍になる」
 と考えている方が、実際にいます。

 この思考は、まさに、
 ドンブリ勘定の一つです。

 いずれにしても、
 この理解でいる限り、
 正常な経営判断はできません。

 たとえば、

(あと、1000万円の利益を作らなければ
 今期は赤字転落になる。これだけは避けたい)

といった切迫感を持って
 商談に臨んでいるような場合、

「売上が倍になれば、利益も倍になる」的な
 ドンブリ勘定的思考でいたら、

その商談では、
 望む結果を得られるわけがありません。

 今回取り上げた内容は、
 知ってしまえば、すこぶる簡単です。

しかも、
 「経営者が知っておくべき会計手法」の
 一つです。

そして、残念ながら、
 ご存知ない経営者が実は多くいます。

 これでは、
 業績を左右するような経営判断をする際に
 とても危なっかしいと言わざるを得ません。

 つまり、
 僕ら専門家がサポートすべき経営者は
 物凄く大勢いる
 ということです。

 別の言い方をすれば、
 経営者本人が、

「経営者が知っておくべき会計手法」を
 知りさえすれば、

今までとは雲泥の差で、
 より的確な経営判断が十分可能になるのです。

 そうすれば、
 やがては、

ビジネスと会計手法が、
 正確にリンクした企業経営となり、
 強い会社への仲間入りを果たしていきます。

 ぜひとも、
 「経営者が知っておくべき会計手法」を
 一つでも多く体得し、

強い会社への仲間入りを果たしてください。

 

今日も最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

 

 次回もまた当コラムでお会いできる
 のを楽しみにしています!