昔、会計監査をしていた頃、
こんな会社がありました。
従業員が数名の会社です。
社長曰く、
「今期は利益が予定より出そうなので、
いろいろと原材料だとか、
文房具だとか、消耗品だとか、
たくさん買い込みますよ。」
「そうすれば、費用はたくさん計上できるし、
ということは、利益が減って、
節税にもなる!ですよね?」
僕曰く
「いやいや社長、ちょっと待ってください。
まずは、利益が上振れしそうなことは、
本当に素晴らしいです。社員皆さんの
頑張りですね。」
「その上で、ひと言いわせてください。
たくさん買い込んだとしても、
使ってない分は費用にならないんですよ。」
社長曰く
「えっ?そうなんですか。
買えば買っただけ費用になると
思っていたけど、違うんですね。」
この場合、
「買った分」が費用になるのではなく、
「使った分」が費用になるのです。
つまり、
「買った分」から
「使っていない分」を差し引いて、
「使った分」を計算するのです。
この
「使っていない分」を特定する手続きを、
在庫の棚卸し、といいます。
聞いたことのある方もいるのではないでしょうか?
ちなみに、
製造業の会社では、
必須中の必須の手続きです。
この棚卸しをちゃんとやらないと、
「使った分」は絶対に正確に計算されない。
モノが原材料の場合、
原材料費が不正確になってしまいます。
結果的に、
原価も不正確になり、
原価率も不正確になってしまいます。
ということは、
正確な経営判断ができなくなると
いうことです。
にも拘らず、
「原材料や事務用品を、買えば買っただけ、
費用になり、節税にもなる!」
という思い込みをしている経営者は、
多いです。
プロから見たら当たり前の会計手法を
ご存じないのです。
もう一つ、
この思い込みがもたらす恐怖があります。
資金繰りへの悪影響です。
運転資金が、
「使っていない」原材料などに張り付くため、
資金繰り悪化の原因になっていくのです。
使わないにも拘らず、
買い込めば買い込むほど、
運転資金をひっ迫する。
この会計手法も、
ご存知ない経営者がとても多いです。
・使わないモノをいくら買い込んでも、
それは費用にはならない。
・しかも、その規模が多額になるほど、
資金繰りを圧迫する。
・費用になるのは、使った部分だけ。
こういった、
ごく当たり前の会計手法を
肚落ちするだけで、
経営者の経営判断は、
その精度が確実に上がります。
肚落ちさせるのが、
僕ら専門家の使命です。
知らないことは怖いですが、
違う角度から見たら、
それは伸びしろでもある証拠です。
まだまだ、
世の中の経営者の伸びしろを、
埋めていきます。
今日も最後までお読みいただき、
ありがとうございました。