今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [2020年5月25日号] P/Lを見て「思ったよりお金が足りない」と首をかしげたことは?

「利益は出ているんだけど、
 いつもお金がないんだよね!」

交流会でお会いする経営者の皆さんは、
 判で押したように、この言葉を仰います。

ほぼもれなくです。

 実は、この言葉、
 会計手法の真理を突いているのです。

 ちなみに、

「P/Lの利益」とは、
 「損益計算書の利益」のことです。

 そうです。

「P/Lの利益より、実際のお金は少ない」
 という真理を体感されていることは、
 さすがです。

 その上で、
 もうひと押し欲しいのは、

「なぜP/Lの利益より、
 実際のお金は少ないのか」

その理屈をご存知ないことなのです。

 これこそが、
 世の中の多くの経営者を
 混乱に陥れている会計手法の代表格なのです。

 今日は
 「P/Lの利益より、実際のお金は少ない」
 という真理をお話しします。

 ある会社が1年を無事に終えて、
 決算を締めました。
 その結果、P/Lは以下の通りでした。

 売上高  100
  売上原価  50
       ———
  粗利益   50
  経費    30
       ———
  税前利益  20
  税金     8
       ———
  当期利益  12
       =====

社長曰く
 「そうか、みんなよく頑張ってくれた。
 税金を払った後の利益が12百万円も
 残った!」

「これで、お金は12百万円増えたから、
 資金繰りもだいぶ楽になるな。」

 経理部長曰く
 「いえいえ、社長。12百万円は会計上の
 利益であって、こんなに資金が増えたわけで
 ないんです。」

 社長曰く
 「えっ?意味がよく分からないけど。
 仕入れて、売って、経費も払って、
 尚且つ税金まで払って、最後12百万円
 残ったんだ。
 なぜ、お金も12百万円増えて
 いないんだ??」

このやり取りを見て、
 「うちの会社と同じだ!」
 とピンと来たのであれば、

これからのお話しをちゃんと
 聞いてください。

 上に示した
 P/Lの当期利益12百万円がそのまま
 お金として残る場合もあります。

 ただし、それは理屈上のことで、
 今のビジネス慣習ではまず現実的では
 ありません。

しかし、その現実的でないケースを
 知った上でないと、
 今回の会計手法は腑に落ちないでしょう。

なので、先ずはそのことからお話しします。

 この会社が、

売上の入金も、
 仕入の支払いも、
 経費の支払いも、

すべて、
 現金取引でやっているとします。
 (これこそ、非現実的です。)

その場合は、

当期利益12百万円は、
 現金12百万円となって残ります。

であれば、
 社長は合点がいきます。

しかし、
 ビジネスをすべて
 現金でやり取りすることは、
 この御時世では
 あり得ません。

今月の売上代金は、来月末に入金されます。
 今月の仕入代金は、来月末に支払います。
 今月の経費も、来月末に支払います。

このように、取引のほぼすべてが、
 現金以外でやり取りされるのです。

これを「信用取引」といいます。

 たとえば、
 この会社、

売上100のうち20が未入金のまま、
 決算日を迎えたとします。
 その場合、
 売上入金は80(=100-20)です。

これだけで、
 当期利益120にも拘らず、
 お金としては100(=120-20)しか
 増えていないのです。

 社長が思い描く
 「増えたはずのお金120」より
 20も少ないのです。

以上の結論を言います。

「P/Lはお金の動きに一見似てはいるが、
 実は全然違う。」

「その原因は、信用取引の存在。」

ということです。

 今日は、
 できるだけシンプルにお話ししましたが、

経営者として、
 肚落ちしていただきたいポイントは
 以上です。

 「P/Lとお金の歪み」

 この会計手法をご存知ないと、
 経営者は無用な混乱に、
 簡単に陥ります。

逆に、
 この会計手法を、
 本質的なカラクリだけでも
 御存知であれば、

経営者は混乱することなく、
 資金繰りを把握できます。

 ぜひ、今回お話しした会計手法の
 本質的な部分だけは、
 肚落ちしてください。

 

今日も最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

 

 次回もまた当コラムでお会いできる
 のを楽しみにしています!