今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [2020年5月27日号] 売上が増えてきた!これは危険信号

「売上が増えてくるのは
 いい事ばかりではない。
 逆に会社がおかしくなる危険性を
 含んでいる。」

これはよく言われていることです。

具体的に言うと、

・資金繰りにひっ迫する可能性が
  大きくなる。
 ・事業規模の成長に、
  組織の成長が付いていけなくなり、
  組織がガタガタになる。

が代表的な弊害です。

 ここまでは、
 皆さんお分かりだと思います。

しかし、
 もう少し突っ込んだ理屈まで
 正確に理解している経営者は少ないです。

 ここでは、

「なぜ、売上が増えると、
 資金繰りにひっ迫する危険性が
 増すのか?」

について、本質的な事をお話しします。

 もちろん、今回も、

「経営者として知っておくべき会計手法」

の一つです。

こんな会社がありました。

事業がなかなか思い通りに進まず、
 思考錯誤を経て、
 ようやく安定的に御発注を
 頂けるようになりました。

やがてこの会社の商品は、
 時流の波に乗り、
 爆発的な売上を上げるようになります。

社長は、
 苦労をかけてきた従業員、家族に
 「今こそ恩返しをする時だ」
 とばかりに、

一気呵成に製造工場を増やし、
 生産能力を上げます。
 当然在庫規模も増えます。

売上が急増するので、
 売掛金は急増します。

合わせて、
 原材料の仕入も増えるので、
 買掛金も急増します。

イケイケドンドンの勢いで、
 事業を拡大していた矢先に、

新型コロナショックが
 襲いかかります。

サプライチェーンが、
 ピタッと止まります。

増えもしないし、
 減りもしない。

まるで、
 マネキンチャレンジを
 観ているようです。

 その瞬間の

・製品在庫
 ・原材料在庫
 ・売掛金残高
 ・買掛金残高

金額的には、
 今までで最大規模です。

一方で、
 この瞬間から、
 減り続けていくものが唯一つあります。

「資金」です。

 資金が減り続けることを
 止めることはできません。

 従業員を雇っている以上、
 給料を払います。
 たとえ、
 売上がゼロでも、です。

オフィスを借りている以上、
 家賃や電気代を払います。
 たとえ、
 売上がゼロでも、です。

 新型コロナショック前に、
 どれだけのキャッシュを持っていたかで、
 持ち堪えられる期間は決まってきます。

もちろん、
 国や県からの支援もあるにせよ、

無策でいたら、
 資金ショートは免れません。

 さて、
 ここでお話ししたかったのは、
 イケイケドンドンで拡大している時は、

資金ショートに
 突き進んでいる危険性が大きい
 ということです。

 なので、その時に、
 資金繰りを悪化させない施策を
 どれだけ実行していたか、

これが運命を分けると言っても
 過言ではありません。

売上が増えれば、
 売掛金も増えます。

もちろん、
 売るために生産量も増やすので、

そうすると、
 製品在庫も増えます。
 原材料在庫も増えます。

このことは、
 資金繰りにどのような影響を
 与えるでしょうか?

 そうです。
 資金繰りを確実に悪くします。

 別の言い方をするならば、
 使えるお金が激減します。

 なぜでしょうか?

製品を販売して、
 回収するはずの売上代金が、

原材料、製品、売掛金

に張り付いたままだからです。

 この状態では、
 自由に使えるお金とは言えません。

 事業規模が大きくなればなるほど、

原材料、製品、売掛金に
 張り付いたお金が
 膨らむ一方です。

 なので、
 事業規模が拡大している
 真っ只中だからこそ、

・原材料の在庫を出来る限り減らす。
 ・製品の在庫を出来る限り減らす。
 ・売掛金の入金サイトを出来る限り短くする。

 これらを実践することにより、
 事業規模が拡大している時に、

資金ショートのリスクを、
 コントロールすることが
 初めて可能になるのです。

 「売上が増えてきた時こそ、
 資金ショートを想定した施策を実行する」

経営者の皆さん、
 この会計手法も、ぜひ肚落ちさせてください。

 

今日も最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

 

 次回もまた当コラムでお会いできる
 のを楽しみにしています!