今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [2020年5月28日号] 「なんだか儲かっている」は危なっかしい

以前交流会でお会いした経営者の方が、
 こんな事を仰っていました。

その社長曰く、
 「最近、おかげ様で商売が順調です。
 なんだか儲かっているんですよね。」

 僕曰く、
 「それは素晴らしいですね。
 このご時世で、時流に合った商品を
 扱われているのは。」

「それで、どんな商品が
 儲かっているのですか?」

 その社長曰く、
 「・・・。(思案中)
 A商品はここ3年くらい売れているし、
 B商品は今期に入って急に売れるように
 なってきた。
 C商品は創業時から扱っているウチの
 看板商品だしな。
 一番儲かっているのは、B商品かな?」

 そうです。

この社長は、自社の売上全体が好調なのは、
 よく御存知なのですが、

どの商品がどれだけ利益を稼いでいるのか、
 見えていないのです。

 「全体は見えているが、個は見えていない。」

 ということです。

 実はこれ、
 かなり危なっかしい状況です。

 どういうことかと言いますと、

 一番利益貢献していると
 思い込んでいるB商品。

B商品の粗利益をほとんど吹っ飛ばす
 くらいの多額な広告宣伝費を
 かけていたとします。

その場合、
 売上だけ見たらB商品はスターです。
 しかし、利益はトントンです。

もし、この状況を把握していたら、
 経営者はどんな経営判断を下すでしょうか?
 いずれにしても、
 このまま放置はしない筈です。

 一方、
 ここ3年くらい売れているA商品。

放っておいても売れるので、
 販売拡大の仕掛けもせず、
 淡々と売っています。

なので、利益貢献はさほどしていません。

もし、この状況を把握していたら、
 経営者はどんな経営判断を下すでしょうか?
 お金を投じて、
 なんらかの販売拡大に
 打って出るかも知れません。

 そして、
 創業時から販売しているC商品。

C商品は、独自の技術の結晶で、
 他社が真似できない商品で、
 利益率がかなり高いとします。
 だから実は、
 積極的に販売エリアを広げれば、
 まだまだ売れて、大きな利益を稼げるのです。

もし、この状況を把握していたら、
 経営者はどんな経営判断を下すでしょうか?
 C商品の生産体制を強化して、
 今まで以上の販売拡大に打って出る筈です。

 さて、
 実際はどうでしょうか?

この経営者は、

「なんだか儲かっている。
 来期もこの調子で行こう。」

で終わってしまうかも知れません。

 残念なことに、
 そこには、具体的な戦略も、
 それを実現するための行動目標もありません。

なぜでしょうか?

 扱っている各商品の商品別売上、

そして、
 扱っている各商品の商品別利益、

すべてが見えていないからです。

 つまり、

「全体は見えているが、個は見えていない。」

状態です。

 この場合、さらに怖いのは、

全体では
 そこそこの利益を稼いでいるにも関わらず、
 ある商品が、
 大赤字を垂れ流している場合です。

 全体は見えているので、
 「利益が出ている。これでヨシ。」
 と楽観視してしまう怖れがあります。

 もし、この状況を把握していたら、
 経営者はどんな経営判断を下すでしょうか?

赤字商品の将来性を最優先に分析して、
 V字回復の施策を打つか、
 もしくは廃番するかも知れません。

この時代、
 黒字商品は伸ばす、
 赤字商品はテコ入れをするか廃番するか、

そういった経営判断を
 躊躇なく下していく必要があります。

 なぜなら、
 外部環境の変化が速すぎるため、
 経営判断が遅れたら、
 命取りになりかねないからです。

 「商品別の利益を把握して、
 黒字商品は伸ばす、
 赤字商品はテコ入れ等の施策を打つ」

 これも経営者に肚落ちしていただきたい
 重要な会計手法の一つです。

 

今日も最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

 

 次回もまた当コラムでお会いできる
 のを楽しみにしています!