今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [2020年6月5日号] 落札受注がメインの会社に事業計画は無用

以前、知り合いの経営者に
 こんな事を聞いたことがあります。

「社長の会社は
  事業計画を立てていますか?」

社長曰く、
 「村上さん、事業計画なんて、
  ウチには全く意味がない。
  なぜなら、立てようがないからです。
  ご存知の通り、
  ウチの案件のメインは官公庁工事です。
  官公庁工事って、入札なんですね。
  だから、入札でウチが落札するなんて、
  宝くじと同じなんですよ。
  そんなもの事業計画なんて立てようもないし、
  仮に立てても全く意味がない。」

 彼は固く思い込んでいる様子だったので、
 僕は黙って聞いていました。

何にせよ、ニーズを感じていない人には、
 どんな素晴らしいものでも、
 何を言っても無駄だからです。

押し付けにしかならないからです。
 大きなお世話以外の何物でもありません。

御本人がその必要性に気付いた時に、
 初めて意味が出てきます。

ただし、気付いた時には時既に遅し、
 というケースも多々ありますが。

 補足しますと、
 この会社は、建設業を営んでいて、
 売上の約50%は、
 官公庁工事の落札が占めています。

 さて、
 この社長の言い分は本当にそうでしょうか?

結論から言いますと、
 間違いです。

ちなみに僕には、
 逃げ口上に聴こえて仕方ありません。

 事業計画は、文字通り、「計画」です。
 そこに込められた精度確度は
 様々です。

しかし、
 高い精度、高い確度が
 求められているわけでは
 ありません。

 どこの会社でも、
 限界を少し超えたレベルの
 売上目標、利益目標を
 事業計画に落とし込みます。

そして、
 損益計画だけでなく、
 損益計画に連動した資金繰り計画も
 必ず作ります。

 なぜか?
 資金繰り計画がなければ、
 将来の財務力というものが見えないからです。

 なので、たとえ、
 売上案件の大半を官公庁工事が占めていて、
 一か八かのレベルで受注しているとしても、

それが事業計画を作らない理由に
 なる訳がないのです。

 確度が分からなくても関係ありません。

予測できる限りの複数パターンを想定して、

受注確度を
  Aランク(確度100%)、
  Bランク(確度80%)、
  Cランク(確度50%)、
 とかに場合分けして、

複数パターンの
 損益計画と資金繰り計画を作るのです。

 そうすることにより、
  楽観的なパターン、
  悲観的なパターン、
  中庸なパターン、
 の3パターンの事業計画のもと、

「今ウチは、
  どのパターンの状況に進んでいるのか」

という現状把握を、
 大掴みでやればいいのです。

 冒頭の社長のように、
 「ウチには事業計画など無用だ」
 などと、
 豪語している場合ではないのです。

 どの会社にも事業計画は必要です。

先日お話しした月に向かうロケットの話を
 思い出してください。

 進むべき軌道から
 誤差レベルでもズレたとして、
 そのズレを軌道修正せずに放置していたら、

ロケットはとんでもない方向へ進み、
 月に到着することなど不可能です。

到着しないどころか、
 行方不明になってしまうでしょう。

 もう一度言います。

事業計画は、
 それを使うことにより、

会社の進む方向をこまめに
 軌道修正していくのです。

そのことを、
 ご存知ない経営者がとても多いです。

 今日の会計手法は、

「事業計画はそれを使うことにより、
  会社の進む方向をこまめに軌道修正する。
  だから、事業計画はすべての会社に必要。
  例外はない。」

です。

全ての経営者に、
 肚落ちしていただきたいところです。

 

今日も最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

 

 次回もまた当コラムでお会いできる
 のを楽しみにしています!