これから、月数回のペースで、
本、映画、音楽などで、
僕なりに、
「これはイイ!!」
と感じた作品を、
皆さんに御紹介していきたいと思います。
今日紹介したい映画は、
『エンロン~巨大企業は如何にして崩壊したか~』
です。
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エンロン。
この会社の名前を聞いても、
平成生まれの人はピンとこないかも
知れません。
しかし、
僕のように
バブル全盛の頃に、会計士として
仕事をしていた人間にとっては、
とりわけ鮮明に記憶に残っている会社です。
このエンロン、
1985年に
エネルギー卸売会社として設立以来、
全米7位という超ド級の急成長を遂げた
巨大企業です。
しかし、2001年、
ウォールストリート・ジャーナルの
スクープで、粉飾会計、不正経理、不正取引
などが暴露され、
わずかその46日後に
破綻に追い込まれるのです。
そして、
その後を追うように、
同じく破綻に追い込まれた
監査法人があります。
その監査法人の名は、
「アーサー・アンダーセン」。
このアーサー・アンダーセンは、
全世界で5本の指に入る名門中の名門でした。
そして、日本にもその支社がありました。
僕の友人のうち何人かは、
アーサー・アンダーセンに就職しました。
受験時代の僕たちにとって、
実は、アーサー・アンダーセンは
憧れの監査法人でした。
なぜか?
今思えば大したことではないのですが、
このアーサー・アンダーセンは、
シカゴに物凄く立派な研修センターを持ち、
毎年の新人研修を3週間かけて、
このシカゴ研修センターで
実施していたのです。
もちろん、
1986年当時、
アーサー・アンダーセンに
新人として就職した僕の友人も
シカゴ研修センターに出掛けていきました。
うらやましく思った記憶だけは、
今でも覚えています。
その後、数年たって、
このエンロン事件。
この事件自体、
悪質な粉飾会計の積み重ねで
起きた事件だったので、
会計士としてはとてもショッキングな
事件でした。
それ以上にショッキングだったのは、
僕らの憧れの的だった
アーサー・アンダーセンが、
あろうことか
その粉飾会計を指南していた、
ということでした。
そのため、
アーサー・アンダーセンの名声は
急転直下、地に堕ちて、
結果的には2002年に
解散に追い込まれました。
ちなみに、
僕の友人がどうなったかは、
知る由もありません。
この映画は、
アーサー・アンダーセンを道連れにした
エンロンの経営陣が
どのような経営判断を下し、
それを受けた幹部社員が
どのような指示を下し、
それを受けた現場社員が
どのような行動をして、
どれだけの犠牲を
顧客に負わせたか。
その見返りに、
エンロンの連中が
どれだけの栄華に溺れて、
そして没落していったのか。
実際の当事者(CEO、CFO、社員の面々)
の実際のインタビュー映像を交えながら、
作られています。
全編を通じて感じるのは、
人間の欲望が自分目線で発揮されると、
とんでもない悲劇をもたらす
ということです。
悲劇は、
周囲の罪もない人々だけでなく、
当の本人たちにも降りかかります。
彼らは実に愚かな所業を
繰り返しています。
会計の知識がない人でも、
興味深く観れるでしょう。
会計の専門家である人は、
この事件をきっかけに、
連結決算制度に厳しいメスが入り、
不正の道を可能な限り、
閉ざすことになったという、
会計の世界の潮流のようなものを
観てとれるでしょう。
いずれにしても、
巨額の利益を目の前にした時の人間が、
いかに制御不能になるか、
その悲しい本性を
再発見することになります。
自分を戒めるためにも、
この映画は繰り返し観たいと思いました。
今日も最後までお読みいただき、
ありがとうございました。