今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第23話] 御社が知らぬ間にジリ貧になっている姿を想像できますか?

職業会計人(公認会計士)として20年、会計コンサルティング会社の共同経営者として10年、通算30年間に亘り、いろいろな形で企業経営に向き合ってきました。その中で、多くの成長力のある会社、もしくはそうではない会社に出会ってきました。

成長力のある会社は時流に乗って業績を急激に伸ばした会社もあったり、大化けとはいかないまでも地道な成長を積み重ねている会社もありました。

一方、成長力の乏しい会社は、赤字を食い止められないまま倒産に追い込まれたり、ちょっとしたタイミングのズレで商機を逃し、長期間の業績低迷に突入した会社もありました。

こういった様々なケースを見てきた中で、伸びる会社と伸びない会社の差がどこで付くのか?という疑問を持ち続けていました。

結果的に、伸びている会社は「手に入れることができたはずの利益を、着実に手にしている」、逆に、伸びていない会社は「手に入れることができたはずの利益に、経営者が目をつぶっている」、ということを確信し、現在その思いはさらに強まっています。

 

手に入れることができたはずの利益に経営者が目をつぶっている。

 

この言葉が何を意味するのかご存知ですか?

もし今後も、この状態を放置するとしたら、会社は「ジリ貧」になっていくだけです。しかも、経営者本人の自覚症状がないうちに、です。つまり、「ゆでガエル状態」に陥り、ある日取り返しがつかないことになっているという訳です。

この事実は、中小企業のみならず、大企業といえども例外ではありません。

よく言われることですが、創業した会社が10年後も存続している確率は僅か約5%、つまり、95%もの会社が創業して10年間存続できていないのです。

現に帝国データバンクによると、2017年上半期(1月~6月)の倒産件数は4,247件(前年同期比+3.2%)、負債総額は8,658億円(前年同期比+3.2%)という統計データが公開されています。

この望まざる状況は、残念ながら下半期以降も続くことは間違いありません。

この膨大な倒産の直接的原因は様々だと思われますが、上記の「手に入れることができたはずの利益に経営者が目をつぶってきた」ことがその根本原因であることは想像に難くありません。

どんな会社も、商品が一つだけ顧客が一社だけということはなく、複数の商品を複数の顧客相手に販売しています。当然、赤字商品もあれば黒字商品もありますし、赤字顧客(儲けさせてくれない顧客)もあれば黒字顧客(儲けさせてくれる顧客)もあります。にもかかわらず、多くの中小企業は、損益を会社全体でしか見ていません。

その結果、赤字商品・赤字顧客の存在を見逃し、売れば売るほど赤字が広がることに気付いていません。

一方で、伸ばせば大きく儲かる黒字商品・黒字顧客の存在にも気付かず、そこそこの黒字にとどまるだけで、大きな儲けのチャンスを逃しています

「知らぬ間に広がっていた赤字」を撲滅していたら、利益は伸びていたはずです。また、「伸ばし切れていない黒字」を完全黒字化していたら、利益は伸びていたはずです。

これがまさに、「手に入れることができたはずの利益」、つまり「潜在利益」の正体です。

この潜在利益を放置したままで、新規商品・新規顧客をいくら追い求めたところで、残念ながら状況が良くなることはありません。

先ずやるべきは、損益を商品単位・顧客単位で見える化し、赤字・黒字の真の原因を深掘りして、最適な打ち手をタイムリーに繰り出し潜在利益を実現させる、という仕組みを構築することです。

つまり、あなたが目をつぶってきた「手に入れることができたはずの利益(潜在利益)」を自分でコントロールしていくのです。

その基盤さえ構築できれば、後はいろいろな戦略を効率的に実行に移すことができるようになります。例えば、新規商品の市場投入、新規顧客の開拓、ビジネスモデルの組み替えといったいずれの戦略を実行したとしても、損益を商品単位・顧客単位で把握し、かつコントロールできる仕組みがあるので、攻める・守るといった緩急を付けた経営判断が迅速に躊躇なく断行できるようになります。

結果的に、事業全体に占める黒字の商品群、黒字の顧客群の割合が高まってくるため、事業の高収益化が進んでいく訳です。

逆もまた然りで、「手に入れることができたはずの利益(潜在利益)」を把握できず、かつコントロールする仕組みが不在の場合、「知らぬ間に広がっていた赤字」はさらに広がり、「伸ばし切れていない黒字」は日の目を見ることはありません。

その状態がそのまま続き、しかも、経営者としての自覚症状がないだけに、まさに「ゆでガエル状態」に陥ります。気付いた時には、取り返しのつかない事態になっているという訳です。

経営者として「ゆでガエル状態」は絶対に回避しなければいけません。そのためにも、「手に入れることができたはずの利益(潜在利益)」を実現させて、利益を自分でコントロールできる仕組みを社内に構築されることを強くお薦めします。

 

あなたは、利益を自分でコントロールできていますか?