今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第30話] 経営に不可欠とされているPDCAだが、実はそのほとんどが無意味

先月の月次決算が締まったことを受けて、今月上旬に開催された、とある会社の経営会議での一幕と思ってお読みください。信じ難いやり取りに見えるかも知れませんが、実はほとんどの会社で同じようなことが繰り返されています。

「先月は売上が計画に対して未達だったが、その理由と今後の対策は?」(社長)

「先月は毎週末のように大雨が降ったため、来店客が予想以上に少なく、その影響を受けて売上は少なかったと考えられます。先月の売上計画の未達理由はそれです。週末が稼ぎ時の当社にとっては大きな痛手でした。今月は週末の天候も安定しそうなので、営業部隊一丸となって頑張ります。」(営業担当取締役)

「そうか、なるほど。分かった。確かに先月は悪天候にやられた感がある。確かに今月は週末の天気は悪くなさそうだし、先月の不調を挽回できるようにぜひ頑張ってほしい。」(社長)

こういった類(たぐい)のやり取りは多くの会社の経営会議の場で行われています。しかも、中小企業だけでなく、大企業においてでも、です。

このやり取り、一見するとPDCAのC(Check~評価)とA(Action~改善)を実施しているかのように見えるかも知れませんが、全くそうではありません。

つまり、経営改善のための価値は何一つ生み出しておらず、単なる世間話の域すら出ていないのです。この程度のやり取りのために、コストの高い経営陣が勢揃いで会議に出席すること自体、会社の貴重なお金と時間を無駄遣いしている以外の何物でもありません。

では、どこがダメなのでしょうか?

まず、営業担当取締役の、売上未達の現状分析に具体性が皆無だという点です。単に、天候不順に売上不振の責任を転嫁しているだけです。しかも、売上不調を挽回するための施策も具体性が皆無で、ただ「頑張ります!」的な精神論に終始しているだけです。不調挽回に向けての実現可能性も皆無です。

次に社長においても、担当役員の具体性が皆無の発言内容を鵜呑みにしているだけで、再検討を促すための指示も一切していません。

これは、トップを筆頭に経営陣の緊張感の無さがそのまま現れているとしか言いようがありません。

このレベルの経営会議が毎月行われているとしたら、この会社に将来性は存在しませんし、何よりもそこで必死に頑張っている社員が気の毒です。

このように経営陣の現状認識能力および戦略立案能力が極めて低い場合、具体的思考に繋がるような経営判断材料を一切生み出さない月次決算の仕組みそのものが最たる元凶です。突き詰めれば、その程度の月次決算の仕組みしか構築してこなかった経営陣にこそ、責任の大半がありますが。

では、経営判断に真に役立つ月次決算とは、どのようなものでしょうか?

それを明らかにする前に、まずは月次決算そのものの本質を以下に明確にします。

月次決算とは、会社がその月に事業展開してきた「結果」を集計し表したものに過ぎません。(人間の身体で言うならば、健康診断結果に相当します。)

つまり、その「結果」だけをいくら凝視したとしても、経営計画との比較で、良かったのか、悪かったのか、という事後的な評価しか出せないのです。そこであげつらう理由は、推測の域を出ることはまずあり得ません。

したがって、推測で考えついた理由を踏まえた施策など、推測の屋上屋を重ねているだけで、実現可能性など伴う訳がありません。当然、その施策は効果を発揮することはないでしょう。

以上を踏まえた場合、真に経営判断に役立つ月次決算とは、次のようなものになります。

それは、「結果」をもたらした「原因」をも詳らか(つまびらか)にした月次決算です。

先ほど、月次決算の本質として「結果」に過ぎない、と書きました。つまり、月次決算書に表示されている全ての数字は「結果」そのものであるという事です。(例えば、売上高XXX万円、売上原価XXX万円、粗利益XXX万円など)

しかし、見落としがちなことですが、その「結果」に至った「原因」が必ずあるのです。繰り返しますが、必ず、です。

随分以前に「『原因』と『結果』の法則(ジェームズ・アレン著)」という本が世界的ベストセラーになったのを覚えておられる方も多いと思います。この本の中でも終始一貫して説かれていたように、「結果」の背後には、必ず「原因」が存在しています。例外はありません。

例えば、売上高について言うならば、以下の通りです。

月次決算書に、売上高3,000万円と表示されている場合、その月のどこかのタイミングで忽然と売上高3,000万円が現れた訳ではありません。その前月もしくはもっと以前から営業担当が必死に種蒔き(これが原因に当たります)してきた結果が、ようやくその月で売上高3,000万円という形で実を結んだのです。

この場合の、営業担当が仕込んできた種蒔き(原因)とは、例えば以下の通りです。

  • 見込顧客へアプローチする
  • アプローチした見込顧客から商談アポを獲得する
  • 商談した見込顧客から見積り依頼を獲得する
  • 見積り提示した見込顧客から受注を獲得する

極めてシンプルですが、売上獲得に至るまでの業務フローを列挙すると上記の通りです。ここまで実施してようやく売上に辿り着くのです。その結果として、売上高3,000万円が月次決算書に表示されるのです。

「結果」のみならず「原因」をも踏まえた月次決算が実施できている会社の経営会議では、例えば次のようなやり取りが展開されます。

「先月は売上計画4,000万円に対して、実績は3,000万円で1,000万円の未達になっている。この現状分析と未達挽回のための施策を説明してもらいたい。」(社長)

「売上計画4,000万円達成のための前提となる見込み客へのアプローチ件数は5,000件を計画していました。実績も計画通りの5,000件をこなしました。しかし、アプローチの次段階に当たる商談アポ獲得については、計画100件に対して実績75件でした。営業担当にヒアリングしたところ、現在の営業陣容は経験値の浅い人間が過半数を占めており、商談に持ち込むための営業がかなり不慣れだったことが判明しました。その点が未達の要因だったという仮説を立てて、現在、中堅社員が指導役として営業経験の浅い社員に対して、今週最優先で営業実戦研修を実施しています。」(営業担当取締役)

このように、経営判断に真に役立つ月次決算とは、売上高3,000万円という「結果」に合わせて、その「原因」に相当する業務プロセス(アプローチ、商談アポ、見積り依頼獲得、受注獲得)を数値化した上で、経営判断材料として経営陣に提供できる月次決算なのです。

ほとんどの会社が、何の根拠もなく通常だと思い込んできた「結果」だけの月次決算に、その結果をもたらした「原因」を重ね合わせることにより、PDCAのCとAが従来とは別次元の有効性を発揮していくのです。

もちろん、経営計画も「結果」のみならず「原因」を加味する方式で策定することが必須です。そうすることにより、PDCAのCとAが「原因」という極めて重要な要素に焦点を当てた状態でフル回転していくことが可能になるのです。

月次決算で「結果」だけでなく「原因」をも数値化する。経営計画も「結果」だけでなく「原因」をも数値化して策定する。

こうして、PDCAの両輪としての月次決算と経営計画をフル活用していくことにより、会社の施策はより具体性を伴い、会社の方向性は経営計画を着実に追いかけ続けていくのです。

「結果」だけ見ていても、効果的な軌道修正など到底不可能です。そこに、会社の成長発展はあり得ません。

「結果」をもたらした「原因」に最大限のスポットライトを当てていきましょう。

あなたは、「結果」ではなく、「原因」に関心を払っていますか?