今週のコラム 「万人を魅了する千年企業を目指す!」 [第50話] 朝令暮改こそが中小企業経営者にとって不可欠な理由

「朝令暮改」、よく耳にする言葉です。

特に集団を率いるリーダー的存在の言動の特質を表現する際によく用いられます。

基本的意味合いは、「朝言っていたことと違う事を夕方には言い出す。なので、安定していない、あてにならない。」というものです。

「ウチの社長は本当に朝令暮改です。言っている事がしょっちゅうコロコロ変わる。」といった具合に、批判めいたことを表現する場合に使われるケースがあります。

ただ、ここで認識しておくべきは、朝令暮改そのものが良い言い悪いというのではないということです。指示を受ける側が悪く受け取れば悪く言われるし、良く受け取れば称賛されるだけ、ということです。

この朝令暮改ですが、この時代において、企業経営者にとって、とりわけ中小企業経営者にとって、欠くべからざる資質として認識すべきです。

理由の一つ目として、外部環境の変化スピードが格段に上がっているため、経営判断の見直しを場合によっては瞬時に行わなければならなくなっていること。

二つ目として、人間の行動の特質としても、かつ情報インフラの発達からしても、競合の動き、業界そのものの動きに必要以上に敏感に反応する傾向が以前よりも増してきており、かつ、伝播するスピードも即時レベルになっていること。

三つ目として、市場の反応も集団心理的に良し悪し抜きに方向が定まると、その一定方向に押し流されていくため、それに呼応すべき場面が予想以上早いタイミングでやってくること。

以上から、経営者が一旦出した指示を、時間を置かずに軌道修正せざるを得ないケースだって十分にあり得ますし、今後はその傾向にさらに拍車がかかってくるものと予想できます。

さて、今回のタイトルに「中小企業経営者」と敢えて明記したのは、ヒト・モノ・カネといった経営資源において、大企業に比べて質量ともに劣る中小企業の場合、軌道修正のタイミングを見誤ること自体、命取りになるからです。

かと言って、ヒト・モノ・カネの経営資源において、大企業より見劣りする中小企業が手をこまねいてただ見ているだけでいい訳がありません。

それはそうです。日本国内で約400万社存在する企業数の99%超を占める中小企業こそが発展していく土壌がなければ、日本という国そのものが地盤沈下してしまうからです。

そのためにも中小企業経営者には、自社の経営を進めるに当たり、他の競合のどこよりも迅速に軌道修正を積み重ねるべく、躊躇なく朝令暮改をしていくべきと確信しています。

ただし、闇雲に言った事をコロコロと変えているだけでは組織の混乱を増すだけで、軌道修正どころの話ではありません。

そこで必要なのものが、経営計画です。具体的には、中期5カ年計画と単年度計画です。

中期5カ年計画とは、将来的に会社がなりたい姿をゴールとして見据えて、そこから逆算する形で、直近5カ年のこうあらねばならない姿を描いたものです。そこには、定性的なストーリーだけでなく、定量的な数値計画も織り込みます。

単年度計画は、中期5カ年計画の1年目を月次ベースにバラした詳細なストーリーおよび数値計画です。

経営者はこの経営計画を達成するための指示を全社員に出します。

ここまでは、経営計画を作成している企業であればごくごく普通にやることであり、特別なことでも何でもありません。(そもそも、経営計画すら作成していない中小企業がほとんどですが)

重要なのは、その先です。

一度作成した経営計画がその後もずっと計画として意味を持ち続けるとは限らないのです。

中期5カ年計画を作成した時の想定事項がそのまま5年間不変である筈がありません。

単年度計画でも同様です。直近の1年間ですら何が起きるか、そして、その起きたことが自社の事業にどのような影響を及ぼすのか分かる訳がないのです。

つまり、経営計画というものは、一度作成したら終わりではなく、不定期に起こる諸々の変化からの考え得る影響を、都度々々修正を言う形で織り込んでいかなければならないのです。

その結果、考え得る限りのシミュレーションを加えた5年後の姿が、当初描いた5年後の姿からズレている場合、そのギャップを解消するための施策を新たな行動計画として追加していくのです。

このように、想定外の事象が起きる都度、経営計画にはシミュレーションを何度でも加えていくのです。そうでなければ、経営計画の意味はないのです。

繰り返しますが、経営計画は作成後、如何にタイムリーに想定外の事象を乗り越えるための施策を織り込んでシミュレートしていくかが極めて大事なのです。

先ほど、経営計画を作成している中小企業はごく僅かだと書きましたが、そのごく僅かの中小企業でも、一旦作成した経営計画を上記のように、タイムリーに状況に応じて見直しを加味している中小企業はさらにごく稀です。

このシミュレーションを行う都度、5年後になりたい姿に比して、ギャップは生じます。しかも、下回るという意味での下方ギャップが通常です。その下方ギャップを挽回するための施策を全社員に周知して実行させていくために、今までの指示内容とは場合によっては正反対の指示を出すこともあり得ます。それが正に朝令暮改なのです

付言しておきますが、中小企業経営者が躊躇なく行うべき朝令暮改とは、この経営計画の軌道修正に伴う施策の実行に裏打ちされたものでなければなりません。

これがもし、何の裏打ちもなく、ただ単に今まで出してきた指示内容とは全く別方向のことを言い出しただけとしたら、社員にとってそれは単なる気まぐれや思い付きとしてしか映らないでしょう。社内の混乱は増すだけで、そのような経営者に求心力など生まれよう筈がありません。

経営計画(中期5カ年計画、単年度計画)の軌道修正にヒモ付きの朝令暮改である限り、中小企業経営者は躊躇することなく、実行していってもらいたいものです。