成功と失敗。
これほど、万人に浸透している二項対立はありません。
オギャーっと生まれて、少年期、青年期、壮年期を経て、終盤の晩年期を過ごしている時でさえも、なお、「成功と失敗」へのこだわりは付いて回るような気がします。
常に競合との競い合いの中で抜きつ抜かれつの勝負に明け暮れている経営者に至っては、この「成功と失敗」がこれほど色濃く当てはまるものは他に見当たらないのではないのでしょうか。
このコラムは経営者のための情報発信の一環なので、この「成功と失敗」についても、経営者にとっての「成功と失敗」にフォーカスしてお伝えしていきます。
さて、再現性という言葉を耳にしたことはあると思います。
具体的には、たとえば、「成功を続けるためには、その成功に再現性がなければいけない。」というフレーズで再現性という言葉に触れるみたいな。
つまり、その成功が、『誰が(who)、どこで(where)、いつ(when)、何を(what)、どうして(why)、どのように(how)』した結果、手に入れることができたのかが分かれば、同じプロセスを再び実行すれば、同じ成功を再び手に入れることができる可能性が高くなるというものです。これが成功の再現性です。
言い換えるならば、成功法則の構築に繋がるという訳です。
逆もまた然りで、成功の再現性を把握できなければ、ようやく手に入れた成功も「単なるまぐれの成功」に過ぎなくなってしまうのです。
ところで、再現性を求められるのは、成功だけではありません。
実は、その再現性をより求められるものがあります。そうです。成功と対極にある「失敗」です。
失敗の場合、同じ失敗を二度と繰り返さないために、その失敗の再現性を完璧に把握しておく必要があります。
つまり、その時に犯した失敗が、『誰が(who)、どこで(where)、いつ(when)、何を(what)、どうして(why)、どのように(how)』した結果によるものなのか、が分かれば、同じプロセスを二度と実行しなければ、同じ失敗を繰り返す可能性を低められるというものです。これが、失敗の再現性です。
言い換えるならば、失敗回避法則の構築に繋がるという訳です。
逆もまた然りで、失敗の再現性を把握できていない状況下で、条件が揃ってしまうと、同じ失敗を繰り返してしまうのです。
失敗の再現性把握ができていないイメージを持ってもらうために、事例(クロージングのために商談を進めてきた会社に訪問し、最終プレゼンをしたものの、結果的に失注したケース)を書きます。
- 営業担当者「社長、申し訳ありません。今回は受注に至りませんでした。」
- 社長「そうか。先方は何と言って断ってきたのか?」
- 営業担当者「予算的にきついので今回は見合わせたい、とのことでした。」
- 社長「分かった。価格戦略を含めて今後の対策を練るように。」
伸び悩んでいる会社の場合、こういったやり取りで終わってしまうケースが多いのではないでしょうか?
上記の断りの理由は、いわば態のいい社交辞令にすぎず、本音を言っていない可能性が高いといえます。これを鵜呑みにしたままでは、失敗の再現性を把握することは到底できず、同じ理由での失注を繰り返す可能性が高いといえます。
先方から本当の断りの理由を聞き出すことは通常期待できないので、以下のように、こちらでトコトン仮説検証を行う必要が出てきます。
- 営業担当者「社長、申し訳ありません。今回は受注に至りませんでした。」
- 社長「そうか。先方は何と言って断ってきたのか?」
- 営業担当者「予算的にきついので今回は見合わせたい、とのことでした。」
ここまでは、上記と同じです。違うのは、次の社長からのフィードバックです。
- 社長「先方はそう言ってきたんだね。では、その現場にいた君にいろいろと聞きたい。要は私の目の前でその時の様子をドラマのように再現してもらいたい。」
として、次のような深掘りをします。
- 深掘り1「アポは何時何分に取って、先方の受付に来訪の旨を伝えたのは何時何分で、その時、どのような言葉で来訪の旨を伝えたのか、ここで再現してくれ。」
- 深掘り2「君が通された会議室に先方の担当者が入ってきた際に、開口一番どのような挨拶をしたのか、ここで再現してくれ。」
- 深掘り3「プレゼンには何分を要したのか?そして、その一部始終をここで再現してくれ。」
- 深掘り4「プレゼン後のクロージングには何分を要したのか?そして、その一部始終をここで再現してくれ。」
- 深掘り5「先方の会社を出たのは何時何分で、去り際にどのような言葉で挨拶をしたのか、ここで再現してくれ。」
以上のように細々(こまごま)としたことも含めて、失注に至ったその日の一部始終を営業担当者には丸ごと再現させて、経営者は丸ごと把握するのです。
その中に、かなりの高い確率で先方に断りの意思決定をさせた原因が潜んでいるものです。そこを探り出すのが、経営者の役割でもあり責務です。
この失敗した時の正確な状況把握、それを踏まえた仮説検証を積み重ねることにより、失敗の再現性が把握でき、その結果、失敗回避法則が構築されていくのです。
失敗の再現性の幅を広げれば広げるほど、失敗回避法則は強固になり、失敗のリスクは減っていきます。
それはそうです。「こういう事をしたら見込み客は買ってくれない。」という経験則が増強されていくからです。
「失敗は成功の母」とはよく言ったものです。まさに名言だと思います。
成功は失敗の存在があってこそ、その存在が際立ってくるものです。
かと言って、失敗から何の学びもせずに、ただただまともに受けているだけとしたら、経営資源(ヒト・モノ・カネ)に限りのある中小企業はひとたまりもありません。早晩、廃業に追い込まれてしまうでしょう。
一つでも失敗を犯したら、徹底的に原因究明と仮説検証を行い、失敗回避法則を積み重ねて、愚直に失敗の再現性を把握していくことです。
あなたは、失敗から一つでも多くの「失敗の再現性」を把握していますか?