今週のコラム 「万人を魅了する千年企業を目指す!」 [第56話] 社会が企業に求める本当の意味での長期政権とは?

組織のリーダーが長期間その地位に居続けることの功罪については、昔からよく話題に採り上げられてきました。その場合、概ね功罪の「罪」に結論付けられてきたのも御存知の通りです。

最近の事例では、日本大学の理事長しかり、日本ボクシング連盟の会長しかり、です。

当の本人と周囲の人たちとの考え方がものの見事に噛み合っていないのにはただ驚くばかりですが、だからこそ、これだけの問題に発展して世間の注目を集めているのでしょう。

企業経営者にとっても、自らの経営トップとしての状態が長期である場合の良し悪しについては、非常に気になるところではないでしょうか。

では最も典型的な長期政権の形はというと、同じ人物が何年も組織トップの地位に座り続けるパターンです。

社員、取引関係者、地域住民の信頼を獲得し続けている場合は、当然の如く名声を博します。

逆もまた然りで、信頼を裏切ることばかりやっていたら、周囲は退陣を求めます。必然の流れです。ただし、この場合、役員たちがイエスマン集団だったり、当人の株式保有割合が50%超だったりすると、退陣させることもままならなくなります。かつ、その組織は求心力などあったものではなく、間違いなくガタガタになり、事業成長など夢のまた夢で、加速度的に衰退していきます。

こういったケースの場合、一番気の毒なのは、組織を信じてそれまでついて来てくれた社員です。

今回の日大や日本ボクシング連盟のトップが、選手そっちのけで自己重要感丸出しに自分自身のことしか考えていないことが、その典型例ともいえます。

今までは、同じ人物が組織のトップに座り続けるパターンを前提にお伝えしてきました。では、長期政権という概念を俯瞰して見るとどうでしょうか?

俯瞰するためには、これまで組織トップにフォーカスしていた視点を一旦剥して、当該トップがかかわりを持つ人たち(たとえば、社員、取引関係者、地域住民など)に視点を合わせ直す必要があります。

ここで、社員、取引関係者、地域住民にとって、彼らが長期政権に求める状況を作りだすことこそが、企業として果たすべき社会的責任です。それが、企業という公器を通じて発揮されれば十分で、経営トップが何も同一人物である必要はないのです。

そう考えると、社員、取引関係者、および地域住民が求める長期政権の「長期」の意味を改めて考え直す必要があるのではないでしょうか。

ここでの「長期」とは、一人の経営トップの在任期間の長さ(たかだか数十年)などという次元ではありません。

周囲が求める「長期」とは、企業としての存続期間と考えるべきです。

社員、取引関係者、地域住民を魅了する企業として、どれだけの期間にわたり存続できるのか。

いくら、万人を魅了する経営方針を持っていたとしても、それが代々事業承継されていかなければ意味がありません。だからこそ、「経営者の最大の仕事は、良き後継者を選ぶことである」とも言われるのです。

株式会社金剛組という宮大工で構成される会社が大阪にあります。578年に聖徳太子が百済から招いた宮大工が創業した企業で、2018年で創業1440年になります。もちろん世界最古の企業です(ちなみに、創業千年超えの企業は他にも8社現存しています)。

金剛組の釘一本も使わずに木組みのみで耐震構造を備えた、数百年も耐えうる寺社仏閣を作り上げる技術は国宝級で、多くの人々を魅了してきたとのことです。

この金剛組も順風満帆ばかりではなく、かつて経営難に陥ったこともありました。当時の債権者たちが、「金剛組を潰すことは日本古来の建築技術を潰すことと同じだ。そんなことはできない。だから、救済しかあり得ない。」という流れで、手を差し伸べられ、現在も存続しています。

ここでお伝えしたい事は、金剛組のような企業は、順風満帆な時だけでなく、経営難の時も万人を魅了し続けていたということです。だからこそ、1440年もの長きにわたり、企業として存続してこれたのです。

世の中の流れは10年先はおろか5年先すらも分からないのですから、千年先など、誰にも分かりません。

しかし、この金剛組のように、万人を魅了する企業になれば、千年企業になれる可能性はゼロではないのです。

「長期」という意味はこのように考えるべきではないでしょうか。

金剛組のような創業千年超えの企業では、創業者の素晴らしい理念やビジョンが脈々と引き継がれて、企業という公器を通じて、周囲を魅了し続けています。

たとえ経営者が何十人と代替わりしようと、理念・ビジョンの一貫性は全く微動だにしないし、時代々々の経営者が自分の地位に固執するなどというて次元の低い思考は持ち合わせていなかったことでしょう。だからこその千年企業なのです。

お家騒動などでニュースに採り上げられるような企業は残念ながら、千年企業などという高み(たかみ)には遠く及ばないことはもちろんのこと、目先の存続すら危ういケースがほとんどです。

一方、数十年存続している企業は、経営トップに就任した瞬間から、後継者の人選に取り掛かるといわれています。

それこそ、本質的な長期政権を目指した経営者の姿勢ではないでしょうか。

あなたは自分の地位にしがみつくことに汲々としていますか?

それとも、自社の素晴らしさを今後何十年も何百年も絶やすことのないように、後継者選びに全力を注いでいますか?