今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第64話] 「風が吹けば桶屋が儲かる」の凄さ

「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざが昔から使われています。

ご存知の方も多いとは思いますが、その意味はこういったものです。

 

風が吹いて土ぼこりが立つ

 ↓

土ぼこりが目に入って盲人が増える

 ↓

盲人は仕事に就くために三味線を買う

 ↓

三味線に使う猫皮が必要になり、猫が殺される

 ↓

猫が減ればネズミが増える

 ↓

ネズミは桶をかじる

 ↓

桶が壊れるので、桶の需要が増えて、桶屋が儲かる

 

こういった連鎖です。実はこれ、経営者が会社の方向性を考える時に参考にすべき思考法です。

一旦話を戻します。

「風が吹く」と「土ぼこりが目に入って盲人が増える。」というのはよく分かります。つまり、原因と結果という「因果関係」が明確だからです。

しかし、一つ飛ばして眺めてみるとどうでしょうか。

「風が吹く」と「盲人が仕事に就くために三味線を買う。」これは理解するのはまず困難でしょう。

その間の「土ぼこりが目に入って盲人が増える」が抜けただけで、繋がらなくなるのです。

ましてや、「風が吹く」と結論の「桶屋が儲かる」に至ると、一体何のことやら理解不能になります。

一見すると、「風が吹く」と「桶屋が儲かる」は何の脈絡もないようにしか見えませんが、間にいくつもの出来事を挟むことにより、原因と結果が連続し、「風が吹く」と「桶屋が儲かる」がピタリと繋がっていくのです。

この場合の「風が吹く」と「桶屋が儲かる」の関係は因果関係ではなく、「相関関係」にあると考えます。

私が今回お伝えしたいのは、この「相関関係」の思考で自社の経営に向き合っていただきたいということです。

たとえば、経営者にとっての経営課題の一つとして、「売上の問題」があります。

この売上の問題に関して、因果関係レベルの戦略では、仮に上手くいったとしても長続きはしないでしょう。なぜなら、因果関係レベルの戦略は競合であれば容易に同じ事を考えつくからです。つまり、瞬く間に埋もれてしまいます。

しかも、異業種に至ってはさらに脅威です。なぜなら、異業種は、あなたの業界の常識にとらわれていないため、彼らにとっての因果関係レベルの戦略ですら、あなたにとっては相関関係レベルの難易度になり、思考が付いていけない可能性があるからです。

これからは、同業よりむしろ異業種を競合として対峙していかなければならない時代に突入していきます。(実は既に突入しています。)

そんな時代なので、経営者であるあなたは、因果関係などという単純明快な戦略は躊躇なく捨て去り、誰もが理解困難な相関関係レベルの戦略を立てるべきです。

もし、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な相関関係レベルの戦略を立てることができれば、同業はもちろんですが、異業種すら付いてこれない事業を構築できるのではないでしょうか。

では、どうしたら、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な相関関係レベルの戦略が立てることができるのか、教えてくれ。という声もあるでしょう。

一言でいえば、そんな都合のいい答えは存在しません。それに、教えてくれというような依存心があること自体、経営者としての覚悟が十分でない証左と言わざるを得ません。

あなたの会社の方向性は、経営者であるあなたが自分一人で考えなければならない。

そのためには、24時間四六時中、考えて、考えて、考え抜くしかないのです。

「風が吹けば桶屋が儲かる」的な相関関係レベルの戦略は、早々簡単に構築できるものではありません。だからこそ、挑む価値がありますし、ひとたび構築できれば、御社の強烈な強みに間違いなくなります。

経営者たるもの、同業はおろか異業種も理解できないような相関関係レベルの戦略を構築していただきたいと願います。

そのためには、考えて、考えて、考え抜いて、さらに考え抜いていきましょう。考え過ぎることなど何一つないのです。

考え抜くこと、それは経営者にしかできない仕事ですから。