「フリーパワー」という商品名を耳にしたことがあるでしょうか。
まだご存知ない方の方が多いのではないでしょうか?
私はつい最近カミさんとの世間ばなしの中から、初めて知ったくらいです。
AIとかIOTとかいった(現時点では)時代の先端を走っているモノではなく、極めてレトロ的なモノに革新的技術をかみ合わせた商品です。
私はこの話を聞いた時、衝撃を受けました。
と同時に、「こういう話はビジネスの世界で生きている人たちよりも、むしろ生活に密着した主婦ならではの情報だな」と感じ入った次第です。
ザックリ言いますと、こういった商品です。
自転車のペダルが接続しているギアがありますね。おおきな歯車のような形状のものです。これをクランクギアと呼ぶのですが、このクランクギアにシリコンを組み込んで、ペダルを踏み込んだ力を推進力に変える商品です。
これにより、坂道や長距離の走行が楽になる、しかも膝や足首にかかる負担を軽減し、筋肉痛にもなりにくい、といった具体にいい事づくめのモノです。
考案者はなんと、自転車業界とは全く接点のない社会保険労務士さんです。御自身の自転車通勤の苦労を踏まえて、考案したそうです。
その道のりは決して楽なものではなく、自転車業界に提案しても門前払いが続く中、ある時、ビジネスフェアに出品した際に、ある大手ホームセンター経営者の目に留まり、そこの資本が入ることになり、一気に商品化が進んだとのことです。
そこまでの期間は足掛け10年余。
いわゆる苦節10年で、決して楽な道のりではなかったと思いますが、既に着実に売れ始めているようです。
日本人がまたやってくれました。
今後の発展が楽しみです。
この一連の流れで感じたことをお話しします。
このフリーパワーの革新対象は、「自転車」そのものです。
自転車。これほど、現代においてレトロ的な日用品はないのではないでしょうか。
レトロ的日用品の代表選手であるにも関わらず、そこにはまだ、革新的技術を加える余地があったということです。
自転車および自転車関連部品を扱う一流メーカーは何社もあります。
もちろん、ユーザー数は膨大にあり、彼らのニーズも把握し尽くしたと決めつけていたのかも知れません。
しかし、そこにはまだ余白があったのです。
その余白を埋めたのが、このフリーパワーの考案者である一介の社会保険労務士さんなのです。
自転車を取り扱う数多の大企業が、まだ見抜けなかった、もしくは気付いていなかったニーズを一人の異分野の人間が見抜いたのです。
取り扱う商品が先進的でなければ将来的に取り残される、とか、顧客のニーズを先取りしていかなければ生き残れない、などという風潮は確かにあります。しかし、それが正しいなどとは誰も証明できません。
その最たる証拠が、今回ご紹介したフリーパワーです。
中小企業経営者はこの外部環境の激変の中で、自社の将来を考えるにつけ、閉塞感を感じておられることと思います。それはそれで事実だと思います。
しかしながら、今回お話ししたような一見信じがたいことが起きる、これも事実なのです。
あなたの会社が取り扱っている商品サービスが先端的でなくても、大いにレトロ調であるとしても、活路はあるのです。
御自身の思考の固定点(天井)を取っ払って、頭から湯気が出るほど考え抜くことに、日々向き合っていただくことを願っています。