今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第68話] もう考え尽くしましたか?それが思い込みに過ぎないというお話しをします。

「フリーパワー」という商品名を耳にしたことがあるでしょうか。

まだご存知ない方の方が多いのではないでしょうか?

私はつい最近カミさんとの世間ばなしの中から、初めて知ったくらいです。

AIとかIOTとかいった(現時点では)時代の先端を走っているモノではなく、極めてレトロ的なモノに革新的技術をかみ合わせた商品です。

私はこの話を聞いた時、衝撃を受けました。

と同時に、「こういう話はビジネスの世界で生きている人たちよりも、むしろ生活に密着した主婦ならではの情報だな」と感じ入った次第です。

ザックリ言いますと、こういった商品です。

自転車のペダルが接続しているギアがありますね。おおきな歯車のような形状のものです。これをクランクギアと呼ぶのですが、このクランクギアにシリコンを組み込んで、ペダルを踏み込んだ力を推進力に変える商品です。

これにより、坂道や長距離の走行が楽になる、しかも膝や足首にかかる負担を軽減し、筋肉痛にもなりにくい、といった具体にいい事づくめのモノです。

考案者はなんと、自転車業界とは全く接点のない社会保険労務士さんです。御自身の自転車通勤の苦労を踏まえて、考案したそうです。

その道のりは決して楽なものではなく、自転車業界に提案しても門前払いが続く中、ある時、ビジネスフェアに出品した際に、ある大手ホームセンター経営者の目に留まり、そこの資本が入ることになり、一気に商品化が進んだとのことです。

そこまでの期間は足掛け10年余。

いわゆる苦節10年で、決して楽な道のりではなかったと思いますが、既に着実に売れ始めているようです。

日本人がまたやってくれました。

今後の発展が楽しみです。

この一連の流れで感じたことをお話しします。

このフリーパワーの革新対象は、「自転車」そのものです。

自転車。これほど、現代においてレトロ的な日用品はないのではないでしょうか。

レトロ的日用品の代表選手であるにも関わらず、そこにはまだ、革新的技術を加える余地があったということです。

自転車および自転車関連部品を扱う一流メーカーは何社もあります。

もちろん、ユーザー数は膨大にあり、彼らのニーズも把握し尽くしたと決めつけていたのかも知れません。

しかし、そこにはまだ余白があったのです。

その余白を埋めたのが、このフリーパワーの考案者である一介の社会保険労務士さんなのです。

自転車を取り扱う数多の大企業が、まだ見抜けなかった、もしくは気付いていなかったニーズを一人の異分野の人間が見抜いたのです。

取り扱う商品が先進的でなければ将来的に取り残される、とか、顧客のニーズを先取りしていかなければ生き残れない、などという風潮は確かにあります。しかし、それが正しいなどとは誰も証明できません。

その最たる証拠が、今回ご紹介したフリーパワーです。

中小企業経営者はこの外部環境の激変の中で、自社の将来を考えるにつけ、閉塞感を感じておられることと思います。それはそれで事実だと思います。

しかしながら、今回お話ししたような一見信じがたいことが起きる、これも事実なのです。

あなたの会社が取り扱っている商品サービスが先端的でなくても、大いにレトロ調であるとしても、活路はあるのです。

御自身の思考の固定点(天井)を取っ払って、頭から湯気が出るほど考え抜くことに、日々向き合っていただくことを願っています。