今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第69話] 自ら受難を呼び込もうとしている金融機関もある。企業経営者として選別力をさらに高めるべき時代が到来している。

私は仕事がら、融資の専門家が集うコミュニティに所属しています。

そのコミュニティのメンバーは本気で企業と金融機関の仲を取り持ち、企業が融資を受け易くなる様に、かつ、金融機関が融資をし易くなる様に、専門家だからこそのサポートを業務として実施しています。

また、コミュニティメンバーは、金融機関と企業の関係性がさらに良くなる様に、様々な支援を行っており、その中で、企業をサポートする上で少しでも役に立ちそうな情報があれば、積極的にシェアしてくれています。

私もその情報共有の心意気には常に感謝しています。なぜなら、そのおかげで、企業の資金調達力強化のお役立ちになることができるからです。

そんなコミュニティですが、先日、次のような情報共有がありました。

あるメンバーが「事業性評価融資に対する各金融機関のスタンス」について調査するため、複数の金融機関を訪問しました。

そこで、ある地方銀行の支店長からビックリするような発言を聞いたそうです。

多分、これを聞けば、金融庁が激怒するような発言です。

それは、「金融庁は、今は事業性評価融資を積極的に進めているけれど、森長官が辞めたら、どうせ、指導方針も元に戻るだろうから、あまり力を入れていません」と、平然と言い放ったそうです。

 以前、別のメンバーが、あの「捨てられる銀行」に登場する、元広島銀行出身で現在は金融庁の首脳陣の一人である、日下智晴氏の講演を聞きにいきました。

その講演後に、「金融仲介機能のベンチマークや事業性評価融資は森長官が交代したら形骸化するのでは?」という質問が参加者から出たそうです。

日下室長の回答は、「金融検査マニュアルも定着するのに、5年かかった。 金融仲介機能のベンチマークや事業性評価融資の推進は、長官が誰であれ、金融庁は取り組んでいく。金検マニュアルの時代に戻る事はない」と言い切っていたとのことです。

金融庁は、「金融行政方針」の中で、「金融仲介機能のベンチマーク」を発展させ、各金融機関の金融仲介(企業の価値向上支援等)を客観的に「見える化」できる統一された定義に基づく比較可能な共通の指標群(KPI)を策定し、当該KPIも活用しつつ、地域金融機関と深度ある対話を行う。また、金融機関間で顧客本位の競争が実現するよう、KPIに基づき収集された結果を含めた開示のあり方についても検討を進める。」

「KPIや企業アンケートの調査結果等を活用しつつ、地域金融機関の事業性評価に基づく融資や本業支援等の組織的・継続的な取組みについて、優良な取組みを実践している金融機関の表彰・公表を行う。」

と言っています。

先の地方銀行の事業性評価融資への取組方針は、金融庁の方針と真っ向対立するものですので、今後、金融庁が、この金融機関に対して、どう接していくのか、とても気になるところです。

ここまで論外のケースは別にしても、金融機関ごとに融資スタンスが違います。

「事業性評価融資を積極的に行っている金融機関」があれば、逆に「信用保証協会の保証付きでないと融資をしてくれない金融機関」もあります。

「融資の際、絶対に経営者保証以外に第三者保証まで求める金融機関」があれば、「経営者保証さえも求めない金融機関」もあります。

どの金融機関が、どんな融資スタンスでいるのかを知ることができれば、経営者は、自社に最適の金融機関を選ぶことができます。

それが引いては、自社を発展成長させていく財務面の最良のビジネスパートナー選びにもなってきます。

経営者は今まで以上に厳しい鑑識眼を以って、金融機関を財務面のビジネスパートナーとして選別していかなければならない時代が既に到来しています。

かなり専門的な判断が求められる分野ですので、専門家の力を活用することを強くお薦めします。

御社が盤石な資金調達ルートを構築して、千年企業のように永続していくことを心より願っています。