今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第71話] 経営者が気持ちを通わせていくもの、それは生身の人間。生身の人間は応えてくれる。

四国の高知にとても興味深い会社があります。

この会社には売上ノルマとかは、一切ないそうです。

女性社員の産休後の復職率は、100%だそうです。

大手不動産会社のフランチャイズのこの会社は、高知県内で現在複数店舗展開しており、業績も順調に伸ばしています。

しかも、そのフランチャイズの全国顧客満足度調査で、店舗部門日本一を4度、個人部門日本一を7度も獲得しているのです。

面白いのは、この会社、女性社員の出産計画に合わせて、出店計画を決めているとのこと。つまり、社員の幸せを会社の成長より優先しているのです。

まだあります。

新入社員採用面接の際に、社長はこう言うそうです。

「私は経営のことは何もわからないんですよ。だから、助けてください。」

不思議な社長です。

だからかどうかは分かりませんが、社員の皆さんの愛社精神は凄まじいものがあるそうです。

社長に対しての愛情もハンパなく、社員の一番の願いは「社長が、一日でも長く元気で社長でいてくれること」だそうです。

凄いことがあります。

新規に来店した見込み客が成約する率が、なんと95%だそうです。

100人の一元さんが来店して、95人が成約するわけです。

肉や魚を買うのではありません。

一生のうちで最も高い買い物と言われている「家」です。

これはどういうことでしょうか?

自分のこと、家族のこと、会社のこと、社長のことに思いを馳せながら、のびのびと純粋に仕事に取り組んでいる社員から滲み出てくる空気感が、見込み客を魅了するからではないでしょうか。

来店してのわずか数時間の中で、担当者、そしてそんな担当者がいる会社に対する、憧れのようなものが芽生えるからではないでしょうか。

聞くところによると、「従来の経営学などでは全く解明不能な会社」ということで、評判が評判を呼んで、いくつもの大学から関心を持たれて、まったく新しい企業経営スタイルとしての研究対象になっているそうです。

こういうことをお伝えすると、「では、さっそくウチの会社も売上ノルマを撤廃して、社員の幸せを目いっぱい唱えて、社員の愛社精神をどうのこうの・・・」と一直線に考える経営者もおられるかも知れません。

しかし、私は、この話を聞いた皆さんに、そっくりそのままこの会社の真似をお薦めしているつもりは毛頭ありません。

この会社がこれからの時代において、唯一無二の成功パターンという訳ではありません。この世界に「絶対」ということなど、絶対にないからです。

しかし、従来からの欧米型数値至上主義に傾倒してきた、日本の企業経営スタイルに一石を投じていることだけは間違いありません。

抽象度を一段上げて、「この会社はこういったほとんどの会社が今まで見向きもしなかったやり方で、会社を一枚岩にし業績を伸ばしている、では、自分の会社にはどのようなやり方があるのだろうか?」という事をとことん考え抜いていただきたいのです。

つまり、皆さんに望むことは、こういう会社が実際にあるという現実を認識していただき、「そこに張り付いている本質」を探っていただくことです。

結論だけ言うならば、この会社のように、顧客から憧れられ、顧客を魅了できる会社になれば、おのずと道は開かれてくるということです。

そこに至るまでの登攀ルートは1本に限られている訳ではありません。むしろ、無限にあると言えます。

経営者として、御社なりの登攀ルートを見つけていただくことを心から願っています。