今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第73話] 仕組み構築に手を出してはいけない場合がある。それは何か?

もう何年も前から、仕組み構築をうたい文句にするビジネス本が巷に氾濫しています。また、仕組み構築を推奨するコンサルタントも数多く見受けられます。

営業現場、製造現場、人事評価、経営管理、ありとあらゆる領域が、仕組み構築の対象として採り上げられています。

そして、世の企業経営者の多くが、この仕組み構築を「是」と考えて、取り組んでおられます。

しかし、ここでちょっと立ち止まって考えていただきたいのですが、御社の仕組みは出来上がったものの、上手く回っていますでしょうか?

つまり、せっかくコストと時間を掛けて作ったその仕組みですが、もしかしたら、期待通りの運用効果が出ていないケースも少なからずあるのではないでしょうか?

もちろん、期待通りの運用効果が出ているケースもあるでしょう。

今日、お伝えしたいのは、経営者の意に反して、せっかく構築した仕組みが効果を発揮していないケースについてです。

こうしたケースには、実は共通した状況が存在しています。

それは、何だと思いますか?

ズバリ、「その仕組みを活かして効果を出すことに対して、社員全員が本気になっていない」という状況です。

そんなシンプルなことか?

と、思われた方もいるかも知れません。

でも、よく考えてください。

仕組みはしょせん道具に過ぎません。

作っただけでは何も生まないからです。

たとえば、ここに、名工が作った彫刻刀があったとします。

仮に、お金持ちがカネにものを言わせてこの彫刻刀を手に入れて、ただ単に床の間に飾っているだけとします。その場合、彫刻刀はただの置物に過ぎず、何も価値を生み出しません。

名工作の彫刻刀を心の底から欲している彫刻家が手に入れて、秀逸な彫刻作品を作りだしてこそ、初めて大きな価値がこの世に生み出されるのです。

企業で構築する仕組みも同じです。

仕組みを導入する前段階で、ある状況になっている必要があるのです。

つまり、その仕組みを活かすことにより、会社の業務を今まで以上に高効率化、かつ高精度化、かつ高品質化に、変えていくことに対して、社員全員が本気になっている状況です。

そうでなければ、多大なコストと時間を投じて作った仕組みも、ただの飾り物にしかなりません。先ほどの例で言えば、床の間に飾られている名工作の彫刻刀に過ぎないのです。

仕組みはしょせん道具です。

その仕組みを動かすのは人間です。

その人間を動かすのはその人間の本気度です。

根っこにあるべき本気度が抜け落ちていたら、当然ながら、その人間は本気には動きません。

人間が本気に動かなければ、道具も正しくは動きません。

つまり、仕組みは正しく動くことはなく、成果は生まれないのです。

すべては、根っこにある社員の本気度です。

経営者が何となく「その仕組みを導入したら、我が社は素晴らしい会社になりそうだ。」などと、憧れを持つのは否定しません。

しかし、それ以上に大切なのは、「仕組みを導入することにより会社を変革させていこうとする本気度」を社員全員に醸成することなのです。

経営者が常日頃、企業トップとしての極太の軸を社員に見せつけていれば、彼らは「ウチの社長が本気でやろうとしていならば、俺たちも協力していこうぜ」と意気に感じるものです。

そこまでいけば、いわゆる基礎工事は完璧です。

そこを軽んじて、経営者が独善で、もしくは経営陣だけで決めた仕組み導入が上手く回っていかないのは、必然の流れです。

社員を本気にさせる。

シンプルだからこそ、軽んじてしまいがちなのです。

一方で、シンプルだからこそ、とても難しいことです。

仕組み構築というピンポイント的な局面でお伝えしてきましたが、会社を良い方向に動かしていくのは、仕組みではありません。

それは、仕組みを動かすことに「本気になった人間」なのです。

御社の場合はどうでしょうか。