今週のコラム 「『盤石の財務基盤』を次世代へと繋ぐ」 [第77話] 箱根駅伝で垣間見えた「最先端とレトロの共存」

今日は1月8日です。

いよいよ松も取れて、世の中全体が通常の動きに戻ってきた頃ではないでしょうか。

年々拍車がかかっているかのようですが、報道では今年も最先端テクノロジーが世界を牽引していくかのようです。

しかし、そういった最先端のテーマが脚光を浴びれば浴びるほど、その対極にある伝統技術や伝統文化に根ざした事業がいぶし銀のような輝きを放ってくるような気がしてなりません。

一見、真逆なものが、平然と共存するのが世の中の構造ではないでしょうか。そして、事業としては、最先端であろうとレトロであろうと、そこに優劣など存在しません。

新年最初のコラムでは、このことについてお伝えしていきます。

私は陸上競技が好きで、箱根駅伝をテレビ観戦するのが正月三が日の恒例行事です。今年もそうでした。

この箱根駅伝、初日の往路では、選手たちは東京大手町を出発して、横浜、平塚、小田原と、西方面にひた走り、ゴールは箱根の山の中腹にある芦ノ湖。復路はその逆方向で、往復では約220キロの長丁場です。

テレビ中継では、選手が走るコース沿いの風景が終始映し出されている訳ですが、今回この映像を観ていて感じたことがあります。

東京から横浜辺りまでは、超近代的な高層ビル群が立ち並ぶ風景の連続で、戦後の日本経済が急速に発展成長してきた証しを見たような気がしました。

一方で、箱根の山に入ってからの風景は、まさに風光明媚な昔ながらの温泉旅館街という感じで、いわば日本の原風景的な佇まいが感じられました。まさにレトロで、日本の経済成長とは無縁であるかのような風景です。

たかだか100キロちょっとの圏内(車で行けば1時間半ほどでしょうか)に真逆な風景が存在するわけです。

戦後高度成長の波を受けて、東京横浜エリアは常に最先端を追い求めて、その姿を変容させ続けて、今の姿があります。

一方、箱根エリアは戦前からの温泉旅館という事業をそのまま守り続けて、今の姿があります。しかも、立派なブランドイメージを築き上げています。

時代の最先端を目指す事業が提供する商品サービスに価値を感じるお客さまは、そこにお金を払います。

逆もまた然りで、時代の最先端には目もくれずに、伝統技術や伝統文化にひたすらこだわるレトロな事業が提供する商品サービスに価値を感じるお客さまは、そこにお金を払います。

どちらか一方だけ、ということはありません。

物事は対極にある存在が、互いに相手を活かすのです。

まさに陰と陽の世界です。

つまり、陰があってこそ陽が際立つ、陽があってこそ陰が際立つ、といった感じです。

世間の耳目は最先端テクノロジーに偏りがちかも知れませんが、その対極にある日本の伝統技術や伝統文化に根ざした事業も、実は負けず劣らずの価値を持っています。

あなたの事業が、最先端もしくはレトロ、いずれのタイプの事業であろうと、身の丈に合った経営を積み重ね、千年企業の礎を築いていかれることを切に願っています。

箱根で代々続く老舗温泉旅館のように。